ずっと、傘の手元のビニールを外すタイミングを考えている。
既にあるものを崩すのは、それなりの勇気が必要。
それに特に差し迫った状況でもないので、決心が先延ばしされていく。
ふと、思う。
ビニールを外して、なにか変わることなどあるのだろうか。
あったとしても、その変化自体ははとても微細なものだ。たぶん具体的な変化の結果よりも、変化自体への拒否感があるのだろう。
人の脳は基本的に保守的にできていると聞いた覚えがある。良い悪いという判断ではなく、慣習に流されやすいというような話だった。
だから、傘の手元のビニールを外すことさえ、ためらってしまう。
家に帰って、勇気を出してビニールを剥がしてみた。
大きな違いはないけれど、手元の革を握った感触は少しばかり良くなった。
そして傘を傘立てに入れて5分もすれば、ビニールを外したことさえ忘れてしまった。