レンタルビデオのアダルトコーナーは、人が最も紳士的になる空間なんじゃなかろうか。

 

繁華街のそこには、帰宅途中のサラリーマン風の者、明らかに暴力的な匂いのする者、若者、初老の者、雑多な男たちが集う。しかし争いもなく、とても静かで荘厳かつ、真剣な時間が流れている。

 

隣の人との距離はつ付かず離れずの一定の不干渉を保ち、人の性的嗜好をあえて詮索しあわない大人の良識が気持ちいい。人に優しくするのだけが紳士じゃない。あえて見えない振りをするのも、また紳士的な振る舞いだ。むしろアダルトコーナーが人をアダルトにするとさえ言えるんじゃないか。

 

たまに距離が近くなったり、バッティングしようものなら軽く会釈でもして無言で離れあうのが常。街中だったらトラブルになりかねない人でも、それは同様。言葉はないが、なんかしらの不文律の不可侵条約のようなものがあるのだろうか。それが気持ちの良い、人間の距離になっている気がする。

 

もしかしたら、世界が一つのアダルトコーナーだったら平和になるんじゃないか。

 

そう思わされてしまうほどの平和な世界がそこにある。