忘れられない、友人の結婚式がある。
断片的になんだけど、たまにふと思い出す。
場所は祐天寺かどこか(すでにあやふや)。新郎の父親が内村鑑三の無教会派の関係で、質素でガラス戸と古い階段が印象的な、教会のような場所だったと思う。
新郎は大学のサークルの2つ下の後輩で、ちょっと岸谷五郎に似た無口な男。
彼らしくとても地味なんだけど手作りの素晴らしい式で、その二日後に自分の結婚式を控えていたのもあって、深く心に残っている。幸せになるんだろうなと、強く予感させる彼らしい良い式だった。
彼は人前に出るのが嫌いな男の割りに、変な目立ちかたをするときがあって。
例えば東北へ共通の友人の結婚式で行ったとき、余興でカラオケを急に振られて『みちのく一人旅』をチョイス。歌ってる途中で気がついて、サビを「みちのく~ふたり旅~」としょうもないアドリブで乗り越えようとしたときは、先輩と大笑いした。まず、選曲がダメだろ、それ(笑)。
卒業後も、なんとなく機会を作って会っていた。彼の卒業式の後に2人でバイクで鎌倉までツーリングしたり、自分が失業してつらかったときに一緒に車で四国へ旅行したり。2人でいるとそんなに盛り上がるわけでもないのだけど、それはそれでいい時間だった。
彼が仕事を辞めてアメリカへ短期留学するときも、経堂で焼肉を食べたっけな。
そういえば、自分の結婚式の二次会は司会をしてもらったことを、今、思い出した。
今までに本当に美味いと思った食べ物の一つは、彼と先輩と三人で岡山へ旅行したときに食べたイカフライ。心から美味いと思った。
……段々、忘れてたことを思い出してくる。
そんな彼とも、結婚後は年賀状をやり取りするぐらいで、ずっと会ってない。でも年賀状はいつも一言添えてくれていて、子供が生まれたときに写真と共に「こんなんでました~」と汚い字で書いてあったのは、大笑いした。
今日、彼の奥さんから電話があった。
大腸癌だったという。
いやな予感はしたんだ。
なんだろう。本当になんなんだ。
1年ぐらい闘病してたんだったら、電話くらいくれればいいのに。腹がたってしょうがい。話がしたかった。一緒に四国へ行ってくれた礼を言わせてほしかった。悲しいよりも、悔しいというのが本音。
いつも、俺たちの後輩イジリに「カンベンしてください」って笑っていた顔が懐かしい。
土曜日、久しぶりに彼に、棺の中の彼に会ったらどんな気持ちになるんだろう。
右はく、本当に残念だ。
