コンビニでたまたま目にした、週刊スピリッツ表紙に「じみへん最終回」の文字。
ずいぶんと読んでいなかったから、知らなかった。
思い起こすと30才になる手前、どうにも行き場のない、情けない、生きる気力もないと「ないないづくし」の一人暮らしをしていた頃、救ってくれたのは古本屋で買い揃えた「じみへん」をはじめとする中崎タツヤの漫画だった。
……救うってのは少し大げさかな(苦笑)。なんというか、人生はそんなにあせんなくていいんじゃないかと言ってくれていた気がした。癒しだったのかもしれない。
例えば、すごい美味しいと褒められた街中の中華料理屋のオヤジが「イヤイヤイヤ、アタシなんて……」と困るシーンがあったんだけど、心底こんなオヤジになりたいと思った。……ここだけ書いてもおもしろくもなんともないですが。
彼の書く路傍の石のような登場人物は、とても矮小で人間臭くてひねくれてて、そして何よりたわいなくて、でもなんとなく生きている。それが自分と近い感じがして安心していたのかもしれない。
それでも、しばらくして忙しくなってくるといつの間にか読まなり、結婚を期に単行本も処分してしまった。
そんなことを思い出しながら、スピリッツを手に取り読んでみる。
思わず変な声が出てしまう、素晴らしい最終回。
果たして、それは自分が好きな「じみへん」だった。
最終回をリアルタイムで読めたのは何かの虫の知らせだったのかとも思う。
『じみへん』が終わった。
自分の中でも何かが終わった気がする。
なんてね。